ニュースでも取り上げる機会が増えた空き家問題。
少子高齢化による人口減少など、国が抱えている問題が根幹にあるので、いくら個人が注意していても空き家問題の当事者になる可能性は高いです。
ただ、空き家が増えることで個人にどのようなデメリットが発生するのかを理解している方は、案外少ないと思います。
2020年の東京オリンピックを機に更に深刻化するといわれる空き家問題。今回は、問題の原因・実情と、被害を被らないためにすべきことを紹介していきます。
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空き家問題を引き起こす2つの原因
空き家問題が深刻になる背景としては、主に以下の2点があげられます。
- 少子高齢化による人口減少
- 相続が上手くいかなかった
この2つは性質が異なるもののようにみえて、どちらも日本社会全体の変化が大きく影響しています。
また、この2点は今後確実に深刻化すると言われているので、将来的に家の売却を考えている方は空き家問題について知っておくことをおすすめします。
空き家問題は不動産の供給過多によって引き起こされる
空き家問題にとどまらず、不動産関連事業全体が2020年以降に大きな打撃を受けると言われていますが、その理由が不動産の供給過多です。
新しい家を買って特にお得なのは、十分なお金があり、今後活用できる期間が十分ある30~40代前半の方です。
しかし、少子高齢化によって、今後この年代の人口がごっそり減っていくと考えられます。
それにも関わらず戸建てやマンションは年々新築が建ち続けているので、物件は余ってしまいます。
しかも不動産は築年数が新しいものから売れていくので、供給過多のしわ寄せは相続した古い物件へといってしまうのです。
つまり、少子高齢化によって不動産購買層自体が減っているにも関わらず新しい物件がどんどん建つので、時間が経つにつれて売れる可能性は減っていってしまうということです。
現在、首都圏を中心に2020年の東京オリンピックに向けて都市開発がおこなわれ、新築物件数も増加していますが、20年を超えると日本の人口減少が一気に進むので、この傾向は加速すると考えられています。
空き家問題は過疎地域だけの問題ではない!
2012年に総務庁は大規模な土地の統計調査をとりましたが、その結果、全国の住宅のうち、空き家となっている割合が13.5%という結果になりました。
特に以下の県では、空き家問題が深刻なことがわかりました。
県名 | 空き家率(2012年時) |
---|---|
山梨県 | 17.2% |
愛媛県 | 16.9% |
高知県 | 16.8% |
徳島県 | 16.6% |
2割近くの住宅が空き家だというのはかなり深刻な現状ですが、この問題は地方のみでおこっているのではなく、東京でも10.9%の家が空き家となっています。
むしろ、空き家率1位の山梨県と比較すると東京は総住宅数が段違いに多いので、むしろ首都圏の方が状況は深刻だと考えられます。
やむを得ず空き家を所有する人達の増加
空き家問題は、相続が上手くいかなかった場合にも発生します。
農林水産業の衰退とサービス業の発達により郊外の人口がどんどん都市部に流入していき、実家を離れて暮らす人が増えてきました。
こうした若者が急に実家の不動産を相続しても、住まいが遠方なので有効に活用できず、空き家のまま放置せざるを得なくなってしまいます。
自身も生まれ育った思い出深い家を手放すこともできず、かといって仕事の都合上、移り住むというわけにもいかない。そんなジレンマも空き家問題を加速させているのです。
空き家は戸建てだけの問題ではない!今後懸念される”マンション空き家”の増加
都市圏でも地方でも深刻化している空き家問題ですが、解決に向けて何かしらの対策が取られているわけではありません。
都市圏は戸建てよりマンションで生活する割合が増加しています。特にその傾向が顕著なのが東京都で、居住地域の3割近くがマンション化しています。
ただ、マンションが続々建てられる一方で人口は減少しているので、今後はマンションでも空き家問題が起こると考えられています。
マンションは戸建てに比べて取り壊しや建て替えをするのが難しい分、戸建てよりも深刻な問題になるでしょう。
今後は空き家問題が都市圏・地方も戸建て・マンションも関係なく、大規模な範囲に広まっていくことが予想されます。
空き家問題は国を挙げて取り組むべき課題
ここまで、空き家が増加している背景と現状について解説しましたが、そうはいっても遠方の空き家を放置するのは仕方ない部分もありますし、「誰も迷惑をかけてないんだからいいじゃないか」と考えてしまう気持ちもわかります。
ただ、空き家問題がこれだけニュースにも取り上げられており、国会でも議論されていることからわかるように、個人や近隣間の問題というよりも、国レベルの問題という側面を持っています。
前述の通り、全国的に空き家件数が増加してはいますが、物件の所有者はこれを緊急事態と捉え、「自分はこうはなるまい」という意識を持ち、準備することが、問題拡大を食い止めるために大切です。
空き家の増加は近所迷惑や災害の被害拡大をもたらす
空き家の増加によって、まず近隣住民に迷惑がかかります。
空き家の境界内に植えられた樹木が伸びて境界を越えてしまったり、害獣・害虫が住み着いて周囲に被害をもたらしたりするのが代表的な例です。
また、空き家というのは犯罪の温床にもなりやすく、放火の被害も極めて多いです。
更に、人が住まなくなった家は老朽化が激しく進むので、災害時に倒壊して近隣に被害を加えることが考えられます。
目に見えるものでなくても、水害などの影響で極めて不衛生になったまま放置すると、細菌が大量発生し、子どもが隣に住んでいると非常に危険な状態となります。
空き家の数が少なければ近所迷惑で済みますが、空き家の件数が増えていけば、国全体のリスクとなっていきます。
空き家問題は不動産の全体的な査定額減をもたらす
現在、世帯数以上に物件が存在している状態ですが、空き家は処理されることなく新たに新築住宅が建てられています。
もちろん、急に一人暮らしの必要に迫られたときに住めるところがないのは問題ですから、世帯数よりも多く住宅はないといけません。
ただ、過剰に不動産が飽和していき、空き家が増えれば、住宅そのものの資産価値が減少し、高値で売却できなくなるかもしれません。
空き家問題は、空き家ではない不動産の売買にも悪影響を及ぼすのです。
空き家を放置しないために対策方法を知っておこう
前述の通り、空き家問題は気を付けていても当事者になり得てしまう問題です。
それでも、早い段階から対策の仕方を知っていれば、事前に空き家化を防ぐことができます。
特に近年は、空き家の拡大を受けて法律も整備され、対策のサービスも次々と生まれているので、早い段階からそれを利用していきましょう。
所有者が存命のうちに不動産の処理方法を話し合う
もし、実家を相続しても使い道がないので、空き家になるのが濃厚であるならば、所有者(両親)が存命のうちから処理をどうするか話し合っておくことをおすすめします。
特に、兄弟姉妹が複数いて相続権が分割されるという場合は、親も含めて話し合う必要があります。
物件を空き家にしないためには誰かが住居とするなどして管理をするか、売却するかの2択なので、どちらが最善かを決めておきましょう。
生前のうちに決めておかないと、遺言で相続人や相続権の割合が決定されてしまい、余計に処理がややこしくなってしまいますよ。
引き取り手のいない物件は自治体に寄付してしまう
空き家を所持していても税金がかかるので、売却してしまったほうがお得です。
ただ、築年数が経ちすぎてしまっていたり、アクセスが悪かったりすると買い手がつかないので、この場合は自治体に寄付をするのがおすすめです。
流れとしては、自治体にある担当窓口に相談をし、調査をしてもらいます。その後、寄付が可能と判断されれば、所有権が自治体に移ります。
自治体は土地を所持して、活用していきますが、老朽化した家がついている場合は解体費用を一部負担してくれる地域もあります。
詳しい内容はこちらにまとめてあるので、寄付に興味がある方は参考にしてください!
・不要な土地を寄付して円滑に処分してしまおう
空き家問題の拡大によって生まれたマッチングサービス空き家バンク
空き家問題は、新たな利用者が見つかって管理を任せればすぐに解決するのですが、利用を希望する人が上手く見つからないのが難点でした。
そこで生まれたのが、空き家バンクと呼ばれる空き家のマッチングサービスです。
各自治体によって運営されているサービスで、空き家を登録することで希望者が閲覧できるようになり、取引がおこなわれます。
この空き家バンクは現在、自治体だけでなく財団法人やNPOなど民間も提供しているサービスとなっており、相談業務や空き家の活用情報提供なども実施しています。
どうしても手放したくない方は空き家管理サービスを利用しよう
なかには、空き家をどうしても手放したくないという方もいらっしゃいます。
ただ、所有者本人が管理できないのであれば、建物はどんどん老朽化してしまうので、誰かに管理してもらう必要があります。
この時におすすめなのが、最近増加している空き家管理サービスの利用です。
物件内部の調査・管理や庭の手入れなどを民間業者が月1回、1万円前後という相場でおこなってくれて、セキュリティチェックなどもおこなってくれます。
月1回で1万円というのは高い気もしますが、現在は国も空き家問題に厳しくなり、年1回程度の手入れだと行政指導が入ることもあるので、遠方に住んでいる方には必要なサービスでもあります。
活用法は実は多い!空き家問題をお得に解消しよう
ここまで紹介したのは、空き家の処理方法でも割とオーソドックスなものでしたが、一度更地にしてしまった上で土地活用すると考えると、選択肢はかなり増えます。
所有者にとって空き家を持っていることは負担以外の何物でもないかもしれませんが、貴重な固定資産でもあるので、便利に活用しない手がありません。
こちらの記事で紹介されている活用方法も検討しながら、上手く利用するのが理想的ですよ。
・初心者でもできる!土地のおすすめ有効活用法