不動産の名義を親から子に変更させることは良くあります。
その代表例が遺産相続や生前贈与など、無料で授受するタイプの取引でしょう。
しかし近年、あえて親子間で不動産売買をするケースが増えています。
「売買は相続・贈与ではないので相続税や贈与税の課税対象にならないし、親子間なら価格を超低額に設定することもできる」という噂が広まったのが主な要因です。
この噂は本当なのでしょうか?この記事で検証・解説をしていきます。
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目次
親子間での相続・贈与と売却はどちらが税金が安い?
親子間で不動産相続・贈与をすると、それぞれ相続税と贈与税がかかります。一方で、売却時には譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税に関してはこちらのページでまとめてあるので、是非ご参照ください!
この3つのうち、どれが一番お得かは不動産のタイプや売却額によってわかれます。
引き渡したい物件の状況 | 最もお得な譲渡方法 |
---|---|
評価額が3,000万円未満 | 相続 |
購入費のほうが現在の評価額より高い | 売却 |
土地を結婚20年以上の子どもに譲渡 | 贈与 |
マイホーム(土地+戸建て)を譲渡 | 売却 |
このように、特定の事例に対して、それぞれお得な譲渡方法はあります。
ただ、相続税・譲渡税は物件の評価額によって課税額が決まるのに対し、譲渡所得税はどれだけ現在の評価額が高くても、それが最初の購入費より低ければ課税は一切ありません。
建物の場合は特に築年数の経過によって評価額は下がるので、ほとんどの場合は売却が最もお得なのです。
課税制度は頻繁に改正されるので要チェック!
2015年、相続法が改正され控除額が半額以下に減少しました。
これまで、売却>相続>贈与の順でお得だった不動産の親子間譲渡ですが、最近では相続と贈与のリスクが同じくらいになっています。
このように、親子間の不動産取引制度は頻繁に改正され、”法の抜け穴”的に税金を安くできる方法は随時規制されてきました。
現在お得と言われている親子間の不動産売却も、いつ制限されるかわからないので、常に情報はチェックしておくことをおすすめします!
親子間の不動産売却でも低額に設定はできない?
不動産売買はかなり自由度の高い取引で、代金・費用などは売買者間で合意があれば自由に変更することができます。
しかし、親子間の場合はタダ同然で取引されることは許されていません。
特にいくら以下がダメと決まっているわけではないですが、市場価格と比べて著しく低い金額で売り出すと、国税庁から贈与税が課されます。
売買をしたにも関わらず、高額な贈与税が課されてしまったら、かなりの負担になるので注意しましょう。
しっかりと売却後のフォローまで考えておこう
不動産売却は親子間でも超低額設定はできません。
「親子なんだから、後でお金を返せば良いじゃないか」と考える方もいるでしょうが、そうだとしても子どもがまとまった額を準備しておかなければ売買は成立しません。
親からすれば貰った代金も子どもに還元したいでしょうが、どのように還元するかを事前にしっかり考えておく必要があります。
子どもが複数いる場合は贈与・相続のほうが良い?
売却は、あくまで親が一人の子どもに物件を譲渡する方法です。
子どもが複数人いる場合は、それぞれに物件所有の権利を分割移譲するのが自然でしょう。
以前は長子に家を丸ごと引き渡すこともありましたが、現在は分割譲渡が主流なので、トラブルを起こさないために正しい方法を選択していきましょう。
親子間で不動産売却をする注意点・ポイント
まず、この手続きをおこなうときには、子どもの意思を確認するのが大切です。
突然、数百万円を支払えと言われても納得はできないでしょうし、「相続よりもずっと税金が安くなる」と説明をしても、不審がられる可能性は高いです。
しっかりお互いがメリットを認識し、準備もできている状態が理想的です。
契約書の作成は親子だからこそ慎重に!
親子間の不動産取引では、他人同士と違って事細かにルールを決める必要はありません。
中には、かなりアバウトな契約書になってしまうケースも見受けられますが、これは避けましょう。
物件や金銭でのトラブルがあったときの基準となるのは、この売買契約書です。
いくら親と子が話し合ったとしても、契約書の方が法的拘束力が高いので、ペナルティなども含めてしっかり取り決めをしておきましょう。
親子関係を壊さずに無理なくすすめていこう
不動産相続が原因で子ども達の関係が断絶するというケースはドラマでも現実でも多々あります。
親としては子どものためを思って引き渡したのに、それがトラブルの引き金になってしまうなんて悲しいですよね。
上記にあるように、親子間の不動産売却はお得ですが、同時に子どもからの同意を得られにくい取引でもあります。
「なんで親の家をお金出して買わないといけないの!?」なんて子どもから言われてしまったときに、しっかり論理的に説明できるように勉強していきましょう。