不動産売却はその不動産の所有者によっておこなわれます。
誰かに家を勝手に売られるのを防ぐためには当然のルールでしょう。
ただ、売り主が認知症にかかってしまったときなどにもこのルールが適用されるのでしょうか。
現在、親が認知症になってしまい悩んでいるという方も多数いらっしゃると思います。
今回はこうした特別なケースでの不動産売却のやり方を解説していきます。
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目次
売り主が認知症だと家裁の許可が必要に
不動産所有者が病気になったときは、親族が申請して所有者の代理を務めることができます。これを成年後見人といいます。
ただ、後見人になったからといって勝手に売却手続きができるわけではなく、家庭裁判所の許可を得なければいけません。
「居住用不動産処分許可の申立」といい、さまざまな視点から協議がされ、許可が下りれば売りに出すことができます。
協議のポイントは大きく分けて4点
申立が許可されるかどうかは、主に以下の4点によって協議されます。
- どの不動産を処分するのか(以前の住まいか、それ以外かなど)
- 誰に対して処分するか(親族か第三者か、あるいは自治体か)
- 価格・条件はどのように設定するか
- そもそも処分しなければならないのか
この中で最も重要なのが、4番めです。
認知症にかかってしまった所有者の意思は確認できませんが、実は売却に反対だったかもしれません。
このことを考えると、単純に後見人の資金の足しにするために売るのは認められず、誰もが納得できる事情がないといけません。
「認知症の親を老人ホームに入れるので、その足しにしたい」という場合でも、貯金残高などを見ながら、本当に家を売らないと施設に預けられないのかを協議するようになります。
判断基準は不動産所有者のためになるかどうか
不動産を売却する理由は人それぞれではありますが、後見人が売る場合は「それが売り主のためになるか」が大切な基準となります。
後見人といえども不動産の所有者ではなく、あくまで認知症によって手続きや契約ができない代わりだという意味合いが強いです。
そのため、明らかに所有者の意思を逸脱していると判断された場合や、明らかではないが所有者との関連性が不明な場合は勝手な処分をすることは出来ないのです。
迷ったら弁護士・司法書士に後見人をお願いするのもおすすめ!
そもそも、なぜ「売り主の意図に関わらず不動産を売却したい」という理由でダメなのでしょうか。
家族であれば、子どもに収益が入ることを認めない親は少数ですし、残高もある程度共有しているはずです。
実は、この成年後見人制度には親子の関係など全く反映されません。
いくら家族や親友でも、急に「あなたの家を売却したい」と言われればほとんどの人は断るでしょう。確かに所有者が認知症という非常事態ではありますが、この事態を後見人がつくことで補っているともいえます。
つまり、後見人がつくことによって所有者が認知症と扱われなくなる(少なくとも不動産取引では)と言えます。
- 親子・友人関係と後見人・被後見人関係は全くの別物
- 後見人の意思は不動産処分には基本的に反映されない
この2点はしっかりと理解しておきましょう。
増加しつつある職業・市民後見人
「家族だから後見人になるのは当然」と考える方も多いですが、前述の通りそもそも家族と後見人は全く別です。
また、気軽に引き受けるともしもの時に責任が生じてきます。
後見人は情を持たず公的・客観的に所有者の利益を追求しなければならない存在ですが、近年ではこうした性格から、第三者や弁護士に依頼をする方が増えています。
後見人は不動産の知識も必要ですし、自分の時間も犠牲にしなければいけません。自信がないなら、プロにお任せするのがおすすめです。
成年後見人による不動産売却の流れ・必要書類
認知症の所有者に代わって成年後見人が不動産を売却する場合は、まず上記の審査に通る必要があります。
後見人に名乗りをあげてから家裁の審査に通るまで3~4ヶ月がかかります。
その後の手続きの流れは、こちらで紹介されているオーソドックスなものと同じです。
成年後見人の不動産売却に必要な書類
まず、家裁に物件の処分を審議してもらうための申立書が必要になります。こちらは家裁に備えてあります。
また、申立の際には戸籍証明も必要です。謄本を準備しておきましょう。
後見人であることが証明され、家裁の審議を通過すると、後見登記事項証明書という書類を法務局で取得できるようになります。
こちらの書類を以て手続きをすすめる形になるので、事前準備を忘れないようにしましょう。
悩んでいる方はまず専門家に相談を!
ここまで、所有者(親)が認知症の場合の一般的な注意点とポイントを解説しました。
ただこれはあくまで一般的なもので、物件の状態も病状もケースにより大きく異なります。
悩んでいる方はまず不動産会社や弁護士に相談をすることが大切です。
同じ悩みを抱えた方は日本にたくさんいて、多くの方が不動産売却をおこなっています。まず過去の例をきき、「自分だけが悩んでいるわけじゃないんだ!」と気づくことが大事かもしれませんね!