不動産の売却は個人と法人では適用される税率が異なるため、場合によっては支払う税金が大きく異なるケースがあります。
そのため将来的に売却する予定の不動産を購入する際には、個人か法人、どちらの名義で取得した方がお得なのか計算しておく必要があるのです。
そこでこのページでは、不動産を売却する際の税率に着目し、個人と法人どちらで不動産を取得すべきか解説していきます。
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目次
個人と法人では不動産売却時の税率が異なる
個人と法人では不動産を売却した際にかかる税率が異なります。
個人で不動産を売却して利益が出た際には、不動産譲渡所得税と住民税と支払わなければなりません。
法人の場合、不動産の売買での損益も、法人でのすべての売上と合算し、法人税で計算を行います。
同じ不動産を売却するにしても、個人と法人では税金の名目が異なるのです。
個人で不動産を売却する際の税率
個人で不動産を売却した際に発生する「不動産譲渡所得」と「住民税」は、不動産を所有した期間によって税率が変動します。
不動産を取得してから譲渡した年の1月1日が5年未満の場合、「短期譲渡所得」が適用されます。
不動産の所有期間が5年を超えている場合は、「長期譲渡所得」が適用され、こちらの方が税率は低く設定されています。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違いは、以下の表の通りです。
所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
このように長期と短期では19%も税率に差が出るので、所有期間が5年付近の方は、もう少し待ってから売却した方がいいでしょう。
また個人で不動産を売却する場合、売買によって利益が発生した場合しか税金は発生しません。
その他にもマイホーム特別控除など、節税するために知っておくべき知識はたくさんあるので、気になる方はこちらの記事を参考にしてください。
法人で不動産を売却する際の税率
法人で不動産を売却する際には、法人での売上と合算されるため、利益が出ていなければ税金は発生しません。
法人税はどれくらい利益が出ているかで税率が変動するので、不動産を売却する際には、現在の収益を計算しておきましょう。
法人の利益ごとに発生する法人税は、以下の表の通り変動します。
法人利益額 | 税率 |
---|---|
0~400万円 | 約21.4% |
400万円~800万円 | 約23.2% |
800万円超 | 約33.8% |
このように利益の出ている法人では、法人税の税率も高くなっていきます。
法人名義の不動産を売却する際には、法人の経営状態もチェックしておかなければならないのです。
所有期間が5年未満なら法人がおすすめ
所有期間が5年未満の場合、個人であれば所得税と住民税合わせて39%の税率がかかってしまいます。
一方、法人税であれば利益が800万円を超えていたとしても、税率は約33.8%で済みます。
そのため短期で不動産を売買するのであれば、法人名義で売却した方がお得なのです。
投資目的で不動産を購入する際には、個人事業主でも法人化しておいた方がお得というわけです。
所有期間が5年超なら個人がおすすめ
所有期間が5年を超える場合、個人であれば所得税と住民税合わせて20%しか税率はかかりません。
また居住用の不動産であれば、3000万円分の特別控除を受けることもでき、税金が発生するケースは稀です。
しかし法人税であれば最低でも約21.4%の税率がかかるため、個人で売却した方がお得になります。
投資目的でなく住居として不動産を取得する際には、個人名義で購入するようにしましょう。
法人名義の場合、安く売っても贈与税が発生します
法人名義の場合、節税のために安く売却しようとしても、贈与税が発生するのでご注意ください。
実勢価額や公示評価額などを参考に、相場に適した時価で取引したものとみなされ、実際の売却価額との差は寄付金として計算されてしまいます。
損金として計算できる寄付金には上限が設けられており、上限を超えた部分は法人税が発生するのでご注意ください。
たとえば本来1億円のある不動産を、2000万円で売却したとすると、8000万円は寄付金として処理されます。
寄付金を損金として計算できる上限が100万円とした場合、7900万円は利益として計算されて法人税が発生することになります。
個人事業主の方は税理士に相談しよう
個人事業主の方で不動産の購入を考えている方は、まず税理士に相談してみることをおすすめします。
個人で購入すべきか、法人で購入すべきかは、法人の経営状態によって大きく変わってきます。
また不動産を利用する目的によっても、どちらの名義で取得すべきか変わってくるので、事前に専門の税理士へと相談しておきましょう。
支払う税金は法律の範囲内であれば、少なく済むに越したことはありません。
これから投機目的での不動産投資を始めようという方も、一度税理士に相談をして、法人化すべきかどうか相談してみるといいでしょう。