不動産の簿価額と売却額の関係はどうなる?

不動産の簿価イメージ

皆さんは「簿価」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

これは会計処理上の言葉で、簡単に言うと帳簿に記載されている財産の価格のことです。

不動産の場合は、取得(購入)時に支払う金額が当初の簿価で、金額は年々減少していきます。

このように、相場や市況によって変動する時価とは対極なのが、不動産の簿価です。

この簿価の金額は、果たして不動産売却と関係があるのでしょうか?また、あるとすればどのように活用していけば良いのでしょうか?

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不動産の簿価は売却でなく投資で参考にすべき項目

結論から言うと、不動産売却に簿価はあまり関係ありません。

不動産売却時の査定額や売り出し価格は相場や周辺の競合物件の存在によって左右されます。

また、実際の成約価格も水回りの状態や売買者の相性などに左右される相対的なものです。

皆さんも自分の新居を簿価を参考に決めるでしょうか?おそらく家族の人数に合った環境や立地、初見でのイメージの良さなどで決めますよね。

一方、簿価は絶対的な価格の指標で「不動産投資でどれくらいの利益/損失が出たか」を計るために利用されます。

不動産投資における簿価の活用例

不動産投資において、簿価は「物件の実際の価値」のように扱われます。外的要因に影響されず、築年数の経過によって減少するという絶対評価に基づいて算出されるからです。

つまり、投資用の不動産を簿価額よりも高値で売ることができれば、その人は得をしたということになります。

簿価を理解していると、時価推移と比較することでいつが絶好のタイミングか見極められるようになります!

簿価を理解していると損益の計算が簡単に!

前述の通り、不動産投資でいくら得・損だったかを見極める基準としても簿価は利用されますが、売却代金-簿価がプラスだったからといって必ずしもお得というわけではありません。

例えば、売却代金が簿価より1,000万円高くてお得と思っていても、ローンが残っていればその返済にあてなければなりません。

しかし、不動産を売却した直後は利益が発生しているので、不動産の売却代金を全てローン返済に充てたとしても、追加で譲渡所得税などが課されます。そのため、トータルではマイナスとなります。

これに対し、不動産の売却代金と簿価額が同じ場合は、利益が発生していないのでローン返済にお金を取られず、譲渡税も発生しません。

法人が不動産売却をする場合は知っておきたい!

こうした仕組みは、特に法人が不動産売却をするときに活用できます。

企業によっては、手持ちの不動産を売却せざるを得ないというシチュエーションもあるでしょう。

このとき企業が最も防ぎたいのはローンが代金によって完済できないことではなく、不動産売却によって損失が生じることのはずです。

こうした損益をしっかりと計算・判断するためには、このように簿価を理解して活かすことが必須となります。

その他の評価基準も覚えておこう!

ここまで、不動産売却と簿価の重要性を解説しました。

このように、不動産には査定額などの他にも、その物件の価値を測る指標というのが存在します。

もちろん、これらの指標をすべて知っていたところで役に立つとは限りませんが、さまざまな視点から客観的に物件を評価する1つのきっかけにはなります。

こうした評価額は、他に以下の5点があります。

  1. 実勢価格
  2. 公示地価(基準地価)
  3. 相続税評価額(相続税路線価)
  4. 固定資産税評価額
  5. 鑑定評価額

①実勢価格

実勢価格とは、いわゆる不動産の市場相場のことです。

売却のときには最も重視すべき評価額で、過去の取引事例のデータを参考に算出されます。

ただ、取引件数が少なかったり、市況が変動していたりすると、実際の価値とはずれが生まれやすくなります。

②公示地価(基準地価)

公示地価は、国が定めた地価のことで、国税庁や国土交通省によって開示されています。

ある意味物件の基準となる評価額ですが、その値で売れるとは限りません。

また、日本全国すべての不動産に公示地価が付いているわけではないので注意が必要です。

③相続税評価額(相続税路線価)

こちらは、物件の相続税を計算するために必要な評価額です。

変動しにくいので、早めに確認をしておけば事前に相続税の目安を付けることができます。

最初のうちは物件がいくらで売れるかばかり気になり、費用や税金に関して見落としがちなので注意しましょう。

④固定資産税評価額

その名の通り固定資産税を算出するための基準額です。

特に贈与税の計算では、物件の価値=固定資産税評価額となるので、調べておく必要があります。

評価額を使ってどのように贈与税を算出するかはこちらにまとめてあるのでチェックしてください。

不動産売却で贈与税が発生?気になるポイントを解説

⑤鑑定評価額

こちらは文字通り、専門の鑑定士によって算出される評価額です。

公示地価などにはない、物件内部の状況なども鑑みて算出される金額なので、上記4つに比べると最も正確と言えるでしょう。

ただ、前述の通り不動産売却では正確な金額ではなく買い手のイメージなども影響して金額が決定するので、こちらも必ずしも正確なわけではありません。

事前に正確な売却額を算出はできないが…

簿価を含めた上記のような評価額は、どれも売却額とイコールなわけではありません。

買い手のニーズや人となり、状況を予測できるはずもないので、ある意味これは仕方のないことでしょう。

ただ、査定額のみを知っていると、急に値下がりを起こしたときに対処できません。なるべく多くの評価額を理解しておくことで、金額が変動する仕組みを理解でき、どれくらいの幅で変化するかの予測も立てやすくなります。

時間のある方は、こうした知識の習得にも力を入れていきましょう!